「思い立ったら即行動」の私(特命記者M)とは対照的に、
「夢」というゴールを見据え、「急がば回れ」の精神で
スーパーホテルに飛び込んだ川野義生さん・志乃さんご夫妻。
(前編)では、経験ゼロのホテル業務で、
まず「信頼関係」という地盤を固めたお二人の姿をお届けしました。
後編では、その地盤の上で学んだ「生きた経営学」と、
卒業後に選んだ「驚きの道」、そして「ブレない夢」の結末に迫ります。

失敗から学んだ「生きた経営学」
記者M:
(前編)では人間関係の構築について伺いましたが、
経営面での「学び」についてもお聞きしたいです。印象的だったことはありますか?
志乃さん:
一番衝撃だったのは、大垣の店舗で安易に「価格を下げた」時の経験ですね。
記者M: というと?
志乃さん:
稼働を上げたくて、ほんの500円ほど価格を下げてみたんです。
そしたら、確かにお客様は増えたんですが、客層がガラッと変わってしまって。
安くしたにもかかわらず、クレームがものすごく増えたんです。
記者M: うわぁ…それはキツいですね。
義生さん:
あの時、肌で学びました。
「価格には明確な『ライン』がある」んだと。
そのラインを越えると、競合するホテルが変わるだけでなく、
お客様がホテルに求めるサービスや価値観も全く変わってしまうんです。
これは、座学では絶対に学べない、本当に生きた経験でした。
記者M: まさに「生きた経営学」ですね。
志乃さん:
他にも、最初は日々のオペレーションで精一杯だったのが、
本部のサポートのおかげで「○月はこういう傾向があるから、発注はこうしよう」とか、年間のリズムで物事を見る視点も学びました。

「貯金」より「経験」を選んだ理由
記者M:
スーパーホテルといえば「資金が貯まる」ことも大きな魅力ですが、
お二人はその点、どう捉えていましたか?
志乃さん:
もちろん資金は目標でした。
でも、私たちは途中で「貯金の最大化」を目指すのをやめたんです。
記者M: えっ、どういうことですか?
志乃さん:
例えば、自分たちが全部やれば人件費は浮かせられます。
でも、私たちはあえてお金を使って求人媒体に広告を出し、人を雇う「経験」を選びました。
義生さん:
「人を雇うのにいくらかかるのか」「どうやって面接するのか」。
これは、将来ダンススタジオを経営するときに必ず必要になるスキルです。
志乃さん:
お金だけを追い求めて体を壊したり、二人だけの経験しか得られないのは違うなと。
スーパーホテルにいる「今しかできない経験」を得ることを優先しました。

卒業後に訪れた「第二の挫折」と、8年間の「急がば回れ」
記者M:
確かな経営スキルと「経験」を武器に、
いよいよ独立かと思いきや、卒業後すぐに開業されたわけではないんですね。
義生さん:
はい。
卒業後は、任期中から約束していた大阪のダンススタジオに社員として所属しました。
当初は2年ほどで独立する予定だったんですが…。
記者M: だったんですが?
義生さん:
ダンスのスキルや感覚を取り戻したり、
本場のシステムを学び直したりするうちに、気づけば8年が経過していました。
志乃さん:
その間に、スーパーホテルで貯めた資金は、
海外研修や体のメンテナンス代でどんどん目減りしていって…。
記者M: それは焦りますね…!
義生さん:
「このままでは難しい」と焦り始めた矢先に、コロナ禍に突入しました。
着任前の「道が閉ざされた」状況が、また繰り返されたんです。
記者M:
二度目の挫折…! そこからどうやって?
義生さん:
本当に奇跡でした。スタジオの生徒さんで、経営者の方がいらっしゃったんですが、
「サポートするからやりなさい」と強く背中を押してくださって。
志乃さん:
その方が物件探しまで手伝ってくれて、
心斎橋を歩いている時に、偶然にも元ダンススタジオの「居抜き物件」が見つかったんです。
記者M: すごい!諦めなかったからこそ、ご縁が繋がったんですね。

「ブレない夢」と、スーパーホテルのDNA
記者M:
開業されて約半年。
スーパーホテルでの経験が今の経営に活きていると感じる瞬間はありますか?
義生さん:
ものすごくあります。
スーパーホテルで一番印象に残っている会長の言葉が、
「人が悪いんじゃなくて、システムが悪い」なんです。
記者M: なるほど。
義生さん:
日本のダンススタジオは、いまだに先生の「感覚」や「経験」だけで教える「師弟関係」が主流です。
でも、私たちはそれをやめました。
スーパーホテルがそうであったように、
標準化された教材(システム)を導入し、誰が教えても一定の質を担保できるようにしたんです。
志乃さん:
「繁閑の波」を読む感覚も役立っています。
大きな発表会(繁忙期)だけでなく、
あえて閑散期に、小規模で参加費を抑えたイベント(閑散期対策)を設計したり。
スーパーホテルが「眠り」でホテル界の常識を変えたように 、
私たちもダンス界の常識を変えたいんです。

【記者Mの編集後記】
川野ご夫妻の物語は、「思い立ったら即行動」の私に「行動」の本当の意味を教えてくれました。
「急がば回れ」とは、単にゆっくり進むことではない。
ゴールへの最短距離が「地盤固め」や「寄り道」であることを冷静に見極め、
目先の利益にブレることなく、着実に「今やるべきこと」を積み重ねる「高度な戦略」なのだと。
スーパーホテルでの4年間。 そして、卒業後の8年間。
お二人が一見「遠回り」に見える道で費やした時間は、
夢を叶えるために最も必要な「根」を育てる時間でした。
そのブレない夢への姿勢が、ピンチを救う「人とのご縁」を引き寄せたに違いありません。
義生さん、志乃さん。
「ブレない夢」の尊さを教えていただき、本当にありがとうございました!

